横並びにする前に:六つの仕組みは種類が異なる
残土の受入先を探す方法は、この数年で増えました。ただ、名前に「マッチング」と付いていても、実際には仕組みの性格が大きく異なります。本記事では、比較表のページで取り上げた6件を材料に、横並びにすると見えてくる三つの違いを整理します。各項目は2026年10月時点の公式サイト・公開資料で確認できたもので、優劣や順位は示しません。
対象は、国土交通省の建設発生土の官民有効利用マッチング、静岡県建設発生土マッチングシステム(SSM)、山梨県の民間残土処分場登録制度、国土交通省のストックヤード運営事業者登録制度、民間サービスのツチオク、一般財団法人先端建設技術センターのSSTRACE SYSTEMの6件です。下の表は、後の説明の前提となる基本項目だけをまとめたものです。
| サービス・制度 | 型 | 運営主体 | 対象 | 料金の書かれ方 |
|---|---|---|---|---|
| 官民有効利用マッチング(国土交通省) | 情報交換型 | 官 | 搬出する工事と搬入する工事 | 登録無料 |
| SSM(静岡県) | 情報交換型 | 官 | 搬出側・搬入側・中間処理場 | 無料(県の広報資料) |
| 民間残土処分場登録制度(山梨県) | 登録型 | 官 | 受入側 | 公式サイト参照 |
| ストックヤード運営事業者登録制度 | 登録型 | 官 | 受入側 | 公式サイト参照(有効期間5年) |
| ツチオク | 取引仲介型 | 民 | 排出側と受入側 | 成立時のみ手数料(1立方メートルあたり200円・税別) |
| SSTRACE SYSTEM | 記録型 | 一般財団法人 | 搬出入の記録(新規申込は2026年2月から休止中) | 公式サイト参照 |
2026年10月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく。最新情報は各社サイトで確認してください。
表を見ると、運営主体や対象、料金の書かれ方がそれぞれ違うことが分かります。以降は、この違いを三つの視点に分けて見ていきます。
違い1:探す仕組みか、登録を見る仕組みか、記録する仕組みか
最初の違いは、仕組みが何をするものかです。6件は大きく四つの型に分けて読むと整理しやすくなります。
一つ目は「情報交換型」です。国土交通省の官民有効利用マッチングとSSMがこれに当たります。搬出する工事と搬入する工事が、土量、土質、時期などを登録し、相手を探します。官民の工事を対象とし、公共工事の間だけでなく民間工事との調整も想定されている点が共通しています。
二つ目は「登録型」です。山梨県の民間残土処分場登録制度とストックヤード運営事業者登録制度がこれに当たります。行政が受入側を登録し、登録簿や一覧を公表します。利用者は相手を「探す」というより、登録の有無を「確認する」ことになります。ストックヤード登録制度では、登録簿のほか勧告一覧や取消一覧も公表されています。
三つ目は「取引仲介型」で、ツチオクが該当します。排出側が場所、土量、土質、搬出時期を登録すると、近隣の受入事業者に通知が届き、受入側が単価や運搬費、距離を添えて応募します。応募を並べて比較できる点が、情報交換型との違いです。
四つ目は「記録型」で、SSTRACE SYSTEMが該当します。ICカードをスマートフォンにタッチして搬出入を記録するもので、受入先を探す機能ではありません。同じ表に並べてはいても、他の5件とは役割が別であることに注意が必要です。この型の違いを理解せずに表だけを見ると、探す手段と記録する手段を同列に比べてしまいます。
違い2:料金が発生する条件と、書かれ方が異なる
二つ目の違いは、料金の扱いです。ここでは金額の多寡ではなく、「どの時点で、誰に、どのような形で」費用が生じるかという構造の違いを見ます。
官のシステムは、利用が無料と案内されているものがあります。国土交通省の利用手引では登録は無料とされ、SSMも県の広報資料で官民を問わず無料とされています。山梨県の登録制度とストックヤード登録制度は、利用者側の利用料というより、事業者が登録を受けるための手続きが中心です。登録の有効期間は、ストックヤード登録制度で登録日から5年と定められています。
民間のツチオクは、会員登録、案件の閲覧と登録、応募が無料で、取引が成立したときだけ手数料が発生します。排出側と受入側がそれぞれ、流通量1立方メートルあたり200円(税別)を負担し、1取引の最低額は1万円(税別)、50立方メートル未満は一律1万円です。この構造は、公式サイトで条件が明示されています。
SSTRACE SYSTEMは、2024年4月に料金体系が改定されており、料金は公式サイトの案内で確認する必要があります。また、公式サイトでは2026年2月17日付で新規お申込みの受付休止が告知されています。
ここで押さえておきたいのは、仲介手数料の水準と、残土の処分費・運搬費の総額は別の問題だという点です。処分費や運搬費は、当事者同士で距離、土質、受入条件を踏まえて決まります。手数料の構造だけを見て全体の費用を判断することはできません。費用の構成はコスト・資格・キャリアのページで整理しています。
違い3:対応地域と、対象とする工事の範囲が異なる
三つ目の違いは、どの地域の、どのような土が対象になるかです。
国土交通省の官民マッチングは、対応地域が公式サイトで確認できる範囲では明示されておらず、本サイトの比較表でも「公式サイト参照」としています。申請は一般財団法人日本建設情報総合センターの専用サイトで行う仕組みです。SSMは静岡県内の情報が中心で、県外への搬出を検討する場合には対象外となります。山梨県の登録制度は県内の民間残土処分場が対象です。
ストックヤード運営事業者登録制度は、全国が対象で、地方整備局ごとに登録簿が公表されています。ツチオクは、受入先情報の検索が全国47都道府県を対象としており、事業の展開は愛知県が起点です。2026年10月1日に提供が開始され、ベータテスト中と案内されていて、受入先情報は約1,860件が整備されています。取引実績は公表されていません。
このように、全国を見られる仕組みと、県域に絞った仕組みが併存しています。県域のシステムは地域の事情に合った運用ができる利点があり、全国対象のサービスは広い範囲から候補を集められる利点があります。ただし、これらはあくまで構造の違いであり、どちらが適しているかは案件の所在地と土の条件によって変わります。
対象とする土の条件にも違いがあります。ツチオクでは、汚染土や産業廃棄物が混じった土は登録できないとされています。行政の登録制度は、盛土規制法の許可や自治体の条例とあわせて確認することになります。制度面の前提は盛土規制法の実務で整理しています。
組み合わせて使う際の確認事項
三つの違いを踏まえると、6件は競合する選択肢というより、役割の異なる仕組みとして組み合わせて使える場合があります。たとえば、登録型の一覧で受入候補の許可や登録の状況を確認し、情報交換型や取引仲介型で相手を探し、記録型で搬出入を残す、という流れが考えられます。
組み合わせる際には、次の点を確認すると手戻りを減らせます。第一に、土の性状です。土質区分、含水の状態、汚染の有無によって、使える仕組みが変わります。第二に、地域です。搬出元と受入先の双方の自治体の規制を確認する必要があります。第三に、記録の方法です。受入先の決定方法にかかわらず、運んだ事実を一貫して記録に残しておくことが、後の説明責任を支えます。
なお、本記事は公開されている情報の整理であり、特定のサービスの利用を勧めるものではありません。料金や提供範囲は変更されることがあるため、最新の条件は各サービスの公式サイトでご確認ください。ダンプの動態管理ツールとの違いは動態管理DXのページで扱っています。
