建設副産物とは何か:種類と、それぞれが従う法律の違い
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建設副産物とは、建設工事に伴って副次的に得られる物品の総称です。代表的なものは、掘削によって生じる建設発生土、解体で生じるコンクリート塊とアスファルト・コンクリート塊、建設発生木材、地下連続壁やシールド工事で生じる建設汚泥、そして分別が難しい建設混合廃棄物です。同じ「工事で出たもの」であっても、品目によって従う法律が異なる点が、この分野の実務を分かりにくくしています。
たとえばコンクリート塊や建設発生木材は廃棄物処理法上の産業廃棄物であると同時に、建設リサイクル法で再資源化が義務づけられる特定建設資材に当たります。これに対して建設発生土は、土砂であって直ちに廃棄物とは扱われないのが一般的です。ただし、運び出し先が適切に管理されていなければ、不法な盛土や不適正な処分につながるおそれがあります。そのため近年は、廃棄物処理法ではなく盛土規制法や資源有効利用促進法の側から管理を強める方向へ制度が動いています。
本サイトは、この品目ごとの違いを出発点に、制度、市場、事業者、デジタル化、コストまでを七つのページで整理する業界レポートです。第1ページにあたる本ページでは、建設リサイクル法と国土交通省の実態調査の読み方、建設発生土と建設汚泥の区別、残土問題が社会課題として注目された経緯を扱います。個別の案件に対する判断ではなく、公開されている制度と統計を読むための地図として使ってください。
主な品目と所管の考え方
建設発生土は、掘削した土砂のうち工事現場の外へ搬出されるものを中心に議論されます。現場内で埋め戻しや盛土に使われる分は「現場内利用」、他の工事へ運ばれて使われる分は「工事間利用」、土質改良プラントやストックヤードを経由して使われる分は「有効利用」の一形態として、それぞれ整理されます。どの利用が進んでいるかは、後述する実態調査で数値として示されます。
建設汚泥は、含水率が高く粒子が微細な泥状のもので、廃棄物処理法上の産業廃棄物の「汚泥」に当たります。排出事業者はマニフェストの交付や許可業者への委託といった義務を負います。一方で、脱水や固化によって品質を改善し、再生利用する取り組みが長く続けられており、後のページで扱う改良土や再生資材の市場と直結しています。
建設リサイクル法の対象と手続きの基本
建設リサイクル法の正式名称は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」です。2000年に公布され、2002年5月に全面施行されました。特定建設資材として政令で定められているのは、コンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの四つです。一定規模以上の建設工事では、発注者が着工前に都道府県知事等へ届出を行い、受注者が分別解体と再資源化を実施する枠組みになっています。
対象となる工事の規模は政令で定められており、建築物の解体工事では床面積の合計が80平方メートル以上、新築・増築工事では500平方メートル以上、修繕・模様替等の工事では請負代金が1億円以上、その他の工作物に関する工事では請負代金が500万円以上とされています。規模の判断や届出様式は自治体の窓口で案内されているため、実際の手続きは所管の都道府県・市区町村で確認する必要があります。
注意したいのは、建設発生土と建設汚泥は特定建設資材に含まれない点です。つまり建設リサイクル法の分別解体・再資源化の義務は、土砂や汚泥には直接かかりません。それでも国は、建設リサイクル推進計画を定期的に策定し、品目ごとの目標値を示すことで、土砂や汚泥を含めた建設副産物全体の有効利用を後押ししています。計画の考え方や達成基準値は、国土交通白書の建設副産物の項で公開されています。
法律と通知を分けて読む
建設副産物の実務では、法律の条文だけでなく、国土交通省が発出する通知やガイドライン、要綱が重要な役割を持ちます。たとえば建設副産物適正処理推進要綱は、発注者・元請業者・下請業者それぞれが建設副産物について行うべき事項を整理した文書で、計画の作成、分別、運搬、処分の確認までの流れを定めています。法律が義務の骨格を、通知や要綱が運用の細部を示すという役割分担を理解しておくと、各種資料を読み進めやすくなります。
建設副産物実態調査の読み方:発生量・再資源化率・有効利用率
建設副産物の量と処理の実態を把握する公的統計が、国土交通省の建設副産物実態調査です。数年に一度、全国の建設工事を対象に、品目別の発生量、現場内での利用量、場外への搬出量、再資源化や縮減の状況を集計します。調査の結果は、建設リサイクル推進計画の目標設定や達成状況の評価に使われます。
国土交通省の資料では、平成30年度(2018年度)の建設廃棄物全体の再資源化・縮減率は約97%と示されています。建設リサイクル推進計画2020は、建設副産物のうち再資源化の「質」を重視する方針を掲げ、建設発生土についても有効利用の水準を維持・向上させる目標を置いています。なお国土交通省は2025年4月に、平成30年度建設副産物実態調査(確定値)の一部の数値に誤りがあったと公表し、訂正を進めています。排出量や有効利用率の具体的な数値を引用する際は、訂正後の最新の公表資料で確認してください。
統計を読む際には、三つの点に気を付けてください。第一に、再資源化率や有効利用率は、分母と分子の定義が品目ごとに異なります。第二に、調査は全工事を対象とした悉皆ではなく、一定の方法で抽出した工事の回答を拡大推計した数値を含みます。第三に、地方整備局ごとに公表される地域版の数値は、全国値と一致しません。九州地方整備局の発表で有効利用率が示されていても、それを全国の水準として引用することはできません。
次回調査で注目される論点
国土交通省の審議会資料では、令和6年度の調査で、建設発生土のストックヤード運営事業者登録制度の活用状況を新たに把握する予定であることが示されています。登録制度は後述する残土規制強化の一環で創設されたものであり、調査で実態が数値化されれば、受入側の適正化がどこまで進んでいるかを客観的に確認できるようになります。
建設発生土と建設汚泥の区別:土砂か廃棄物か
現場で特に混乱が生じやすいのが、掘削した泥状の土を「土砂」として扱えるのか、「汚泥」という産業廃棄物として扱うのかという区別です。区別を誤ると、土砂のつもりで搬出したものが無許可の廃棄物処理にあたるなど、運搬・受入の双方に法的な問題が生じます。
国の通知では、含水率が高く粒子が微細な泥状のものを建設汚泥と整理し、判断の目安としてコーン指数がおおむね200キロニュートン毎平方メートル以下、または一軸圧縮強度がおおむね50キロニュートン毎平方メートル以下といった数値が示されています。ただし、この数値はあくまで判断の目安であり、最終的な判断は排出事業者の責任で、個々の土の性状、発生工事の種類、自治体の運用を踏まえて行う必要があります。迷う場合は、工事を所管する自治体の廃棄物担当部署に事前相談するのが基本です。
また、発生土の土質区分にも注意が必要です。国土交通省の発生土利用基準では、コーン指数などに基づいて第1種から第4種建設発生土、および泥土に区分し、区分ごとに適した用途を示しています。砂や礫に近いものは盛土や埋戻しに使いやすく、粘性土が強いものは土質改良を前提にしないと利用が難しい、といった具合です。この区分は、受入先を探す際に求められる情報であり、第3ページで扱うマッチングサービスでも、登録時に土質を入力する項目が置かれています。
汚染土壌の場合は別の制度が加わる
掘削した土に有害物質が含まれる場合には、土壌汚染対策法の規制が重なります。自然由来の重金属を含む土、過去の工場や事業所の土地利用に起因する汚染土は、搬出先として汚染土壌処理業の許可を持つ施設などが求められることがあります。環境省は土壌環境に関する制度の情報を環境省の土壌環境関連ページで公開しており、第4ページで扱う土壌浄化技術もこの制度の枠組みで使われます。
残土問題の経緯:熱海市土石流と規制強化の流れ
建設発生土の扱いが社会的に大きく注目されたのは、2021年7月3日に静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した土石流災害がきっかけです。被害を受けた谷の上流部には盛土があり、静岡県の調査ではこの盛土が被害を拡大させた要因の一つとされました。災害後、各地で不適切な盛土が存在しないかの点検が行われ、土地の用途ごとに異なっていた規制の隙間をなくす必要性が議論されました。
その結果、2022年5月27日に宅地造成及び特定盛土等規制法が公布され、2023年5月26日に施行されました。農地、森林、宅地といった土地の用途にかかわらず、危険な盛土等を全国一律の基準で規制する仕組みです。詳細は第2ページで解説します。同じ時期に、国土交通省は建設発生土のストックヤード運営事業者の登録制度を創設し、資源有効利用促進法に基づく省令も改正されて、元請業者による建設発生土の搬出先の確認が強化されました。
この一連の動きには、共通した考え方があります。それは、土が出る側だけでなく、運ぶ側と受け入れる側まで含めて、最終的な行き先を追跡できる状態にするということです。第5ページで扱う動態管理やトレーサビリティは、この考え方を現場で実装するための技術として位置づけられます。
規制強化後の市場の変化
規制の強化は、受入先の選別を促しました。許可や登録を持つ受入地には、土の流れが集まりやすくなります。一方で、受入先を探す手間や、受入条件の確認に必要な書類が増えるという負担も生じています。そうした需要を背景に、官民のマッチングシステム、自治体の登録制度、民間サービスなど、受入先探しを支援する仕組みが多様化してきました。第3ページの比較表は、その現状を運営主体や料金体系などの事実項目で並べたものです。
本サイトの読み方と、次に読むページ
本サイトは、建設副産物と残土リサイクルの業界を、制度、市場、事業者、技術、コストの順に整理しています。まず制度の骨格を知りたい方は、本ページに続いて盛土規制法の実務をお読みください。受入先を探すサービスを比較したい方は残土マッチング・受入先検索サービスの比較表、土壌浄化や建設汚泥の再生に取り組む事業者の技術を知りたい方は主要事業者の比較表が参考になります。
運搬のデジタル化についてはダンプ動態管理・電子マニフェスト・トレーサビリティDX、改良土や固化材の市場については改良土・再生資材と固化材市場、費用や資格、職種についてはコスト・資格・キャリアで扱っています。いずれのページも、公式サイトや官公庁の公開資料で確認できた内容に限って記載し、確認できない数値は書かず「公式サイト参照」としています。運営方針は運営者情報・編集方針をご覧ください。
