ニュースの概要
PR TIMESによると、残土の処分先を現場の近くで探せるサービス「ツチオク」が10月1日に提供を始めた。利用登録は無料で、手数料がかかるのは取引が成立したときだけだという。残土は工事のたびに必ず出るが、受け入れ先の情報は知り合いや業者の口コミに頼ることが多く、探す手間も費用も現場ごとにばらつく。このサービスは、その探し方を地図と距離の考え方に置き換えようとするものだ。初期費用ゼロで試せる料金設計も、中小の施工会社が手を出しやすい点として目を引く。
引用元: 残土の処分先を現場の近くで探せる「ツチオク」、10月1日提供開始 登録無料・手数料は成立時のみ(PR TIMES)
分析・見解
残土は出して終わりではなく、行き先探しが工期を左右する
建設工事では、掘れば必ず土が出る。この残土(=工事で掘り出した余りの土)の行き先が決まらないと、掘削そのものが進まない。受け入れ先は、土を必要としている別の現場や、許可を受けた処分場などだ。ただ、その情報は表に出にくい。多くの会社が、付き合いのある業者に電話をかけて探している。担当者の経験と人脈に頼る世界である。
ツチオクの特徴は、現場の近くで探せる点にある。残土の費用は、受け入れ料と運搬費の合計で決まる。ダンプで運ぶ距離が延びれば、燃料費も人件費も膨らむ。近場の候補が一覧で見えるだけで、見積もりの前提が変わる。
盛土規制の強化で、安さだけでは選べなくなった
2021年7月の熱海市の土石流では、盛土の崩落が被害の起点になったとされた。これを受けて、2023年5月に盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)が施行され、土を出す側にも責任が問われる場面が増えた。行き先が適正かどうかを説明できなければ、発注者や自治体から問われる。
つまり、探す仕組みには「安く見つかる」ことだけでなく、「後から説明できる」ことも求められる。記録が残る形で探せるかどうかは、大きな価値になる。
成立時のみの手数料は、掲載側の心理的な壁を下げる
マッチングの事業で最初に壁になるのは、双方が集まるかどうかだ。登録無料なら、受け入れ側も排出側も試しに載せやすい。手数料を成立時だけにすれば、使わなかった月の負担はゼロになる。中古建機の売買や、空きトラックの手配といった分野でも、似た考え方の仕組みが広がってきた。
ただし土は重く、体積も大きい。混ざり物の確認が難しく、成立後にトラブルが起きやすい。ここは他の分野より難度が高い。
鍵を握るのは、掲載数と土質情報の細かさ
地域ごとに候補が十分に集まるかが、最大の分かれ目になる。さらに、土の種類(砂、粘土、混ざり物の有無)が分かる情報があるかどうかで、使える度合いが大きく変わる。地図上に点が多くても、条件が合わなければ連絡は無駄になる。数よりも、条件の絞り込みやすさが勝負になるだろう。
ビジネスへの影響
見積もり前に、近隣の受け入れ先を三つ比べる習慣を
施工会社にとって、最初の使い道は見積もりの精度を上げることだ。残土の処分費は、契約の段階で想定が甘いと、あとで利益を削る。着工前に近隣の候補を三つほど並べ、受け入れ料と距離を比べておけば、想定のぶれは小さくなる。使うたびに記録を残せば、自社の相場表にもなる。
運搬を業者に任せきりの会社は、まず自社の残土量と平均の運搬距離を把握したい。数字がなければ、比較のしようがない。土が足りない現場の側も、埋め戻しや造成用の土を購入より安く確保できる可能性がある。
行き先の記録を残し、元請けと発注者に示す
盛土規制が強まるなか、どこへ運んだかの記録は守りの資料になる。契約書、受け入れ証明、搬入量をひとまとめにして保管したい。サービス上のやり取りだけに頼らず、現地確認の写真や許可の写しは自社でも持つべきだ。紙とデータの両方を残すと安心である。
無料で試せる今こそ、小さな案件から検証する
初期費用がないので、リスクは小さい。まずは小規模な現場で一件だけ使い、探す時間、運搬距離、最終的な総費用を従来の方法と比べるとよい。比較の項目は、回答の速さ、土質条件の合致、成立後のやり取りの手間の三つで足りる。結果が良ければ、残土量の多い現場へ広げる。合わなければ、成立時のみの課金なので撤退も容易だ。
経営者には、残土を「処分する費用」ではなく「管理すべき資産」として見直す機会にしてほしい。
