ニュースの概要
韓国の全南光州統合特別市が、来年初めに着工を予定する湖南半導体国家産業団地の造成で、都市部の民間開発現場から出る余剰土砂を盛土材に回す案を検討している。最初に開発する優先区域は約208万平方メートルで、地面をかさ上げする基盤造成には200万~300万立方メートルの盛土材が要ると見積もられている。市が想定する調達先は、約3000戸規模の複合住宅の開発現場と、民間の公園開発現場だ。いずれも工事の過程で土砂が余る見込みで、それを産業団地へ運べば、捨て場の確保と盛土材の購入という二つの手間を一度に減らせる可能性がある。ただし、現時点では検討段階の計画である。
引用元: 半導体国家産業団地の造成に民間開発現場の余剰土砂を活用へ(Newsis)
分析・見解
200万立方メートル超の土を、どこから運ぶのか
盛土材200万~300万立方メートルは、積載量およそ6立方メートルの10トンダンプで数えると、33万~50万台分にあたる。1日200台が休まず往復しても、単純計算で4年半から7年近くかかる量だ。搬入路を増やせば短くなるが、土の確保が工程全体の足かせになりやすい点は変わらない。着工前から調達先の目星をつけたいという市の動機は、ここにある。
ここで効いてくるのが、土の出どころの近さである。遠くの採石場から買えば、価格に運搬費が重くのしかかる。市内で出る土を使えれば、距離が縮み、費用と時間の両方を削れる。
住宅団地の掘削土は、造成地にとって好都合な供給源
約3000戸規模の複合住宅では、地下階や基礎の掘削で大量の土が出る。出す側は処分費と運搬費を払い、受け入れ先を探す。受け入れる側は、盛土材を買う。需要が逆向きに重なっているので、間をうまく取り持てば双方の費用が下がる。
日本でも、国が建設発生土(=工事で掘り出した土)の工事間利用を進め、土の出る現場と要る現場を結ぶ情報交換の仕組みが運用されている。大規模造成と再開発の残土を組み合わせる発想自体は、新しいものではない。新しさは、半導体という納期の厳しい案件に、民間の残土を正面から組み込もうとする点にある。
土の質と搬入の時期が、計画の成否を分ける
盛土材は、何でもよいわけではない。水分の多い粘土や有機物を含む土は、締め固めても沈下しやすい。半導体工場は微細な振動や地盤のわずかな動きに敏感で、地盤への要求は一般の工場より厳しい。
もう一つの難所は時期のずれだ。住宅や公園の工事は民間の事業計画で動くため、土が出る時期と団地が土を欲しがる時期が重なる保証はない。仮置き場(=土を一時的に積んでおく場所)を用意し、土質試験と汚染履歴の確認を終えた土だけを受け入れる運用が欠かせない。検査を怠れば、後から地盤改良の追加費用が出て、節約した分が消えてしまう。
これは土木の話である以上に、道路と時間の物流問題
ここに、最も重要だと考える視点がある。土の調達は、掘る技術よりも運ぶ段取りの問題だということだ。数十万台のダンプが同じ道を通れば、渋滞、騒音、粉じんが近隣に出る。住民の理解を得られなければ、搬入の時間帯が制限され、工程が止まる。
一方で、市内の短距離輸送に切り替えれば、遠方の採石場から運ぶより二酸化炭素の排出は減らせる。環境面の説明材料になり、投資を検討する企業にも伝えやすい。国家産業団地の誘致では、電力や水と並んで、工期の確実性が企業の判断を左右する。土の調達計画を早く示すことは、そのまま信頼につながる。
ビジネスへの影響
土を出す側の企業は、処分費を収益に変えられる
住宅や商業施設の開発会社にとって、残土の処分は読みにくい費用項目だ。受け入れ先が決まらないと、工事が止まる危険もある。産業団地側と早い段階で搬出契約を結べば、処分費の見積もりが固まり、資金計画も立てやすくなる。入札や事業計画の段階で、搬出先と土質情報を示せる事業者は、提案の説得力が増すだろう。土量の記録を日ごとに残しておくことも、後の精算で役に立つ。ただし、受け入れ側の事情で搬入が遅れる場合に備え、仮置きの費用負担を契約に書いておく必要がある。ダンプ会社や仮置き場の運営者にも、新しい商機が生まれる。
日本の立地担当者が持ち帰れる三つの確認事項
第一に、盛土が必要な量と、周辺で出る土の量を、同じ地図の上で見比べることだ。第二に、受け入れ可能な土質の基準を、先に文書で決めておくこと。第三に、搬入ルートの住民説明を、工事の発表と同時に始めること。いずれも費用はほとんどかからないが、後から手当てすると高くつく。地元の建設会社との連携も早めに検討したい。九州や東北のように半導体投資が集まる地域では、似た場面がこれから増える。
計画が動き出す前に押さえておきたい不確実性
今回の話は、あくまで検討段階である。民間側が土を出すかは、開発の進み具合しだいだ。土質が基準に届かなければ、想定した量を確保できない。市場の動きとしては、土量の需給情報を共有する仕組みや、土質を保証する第三者検査が、新しい事業になり得る。意思決定者は、土を無料の資材と見ず、品質と時期の条件付きで得られる資源として扱うべきだ。計画の発表後に実際の搬入量を追って確認すると、事業の実現度を測れる。
