ニュースの概要
清水建設、日本ソーラトン、日本通運の3社が、東京都港区の芝浦プロジェクト第II期工事範囲の解体工事で、天井材の岩綿吸音板およそ560トンを再資源化したと発表した。環境省の広域認定制度を使い、解体現場で対象の建材を分けて集め、メーカー側が受け入れられる時期と量に合わせて運ぶ仕組みをつくったという。解体工事ではさまざまな廃棄物が混ざりやすく、分別も品質の確認も難しい。そのため、新築工事に比べて建設副産物の再資源化は進みにくかった。今回の事例は、その壁を物流まで含めて乗り越えようとした点に特徴がある。
引用元: 清水建設ら3社、解体現場で天井材約560トンを再資源化(Circular Economy Hub)
分析・見解
新築より解体で再資源化が遅れる本当の理由
新築現場で出る端材は、材料の種類がはっきりしている。種類ごとに箱を分ければ、きれいな状態で回収できる。一方、解体現場では、何十年も前に取り付けた建材が壁や天井の中で入り組んでいる。どの製品なのか、何が含まれているのか、外してみるまで分からないことも多い。
岩綿吸音板は天井に広く使われているが、石膏ボードや断熱材、配線、金具と隣り合っている。丁寧に外さなければ他の廃材が混ざり、メーカーは受け入れられなくなる。再資源化が進まない原因は、技術よりも「現場の手間」と「品質への不安」にある。
広域認定制度が、メーカーの工場を出口にする
広域認定制度とは、メーカーなどが自社製品の廃棄物を広い範囲で回収し、処理する場合に、地域ごとの許可を個別に取らなくてもよくする仕組みである。つまり、作った会社が使い終わった後の回収と処理にも関わる制度だ。
今回の要点は、出口がメーカー側に決まっていたことだと読める。行き先が明確なら、現場は「どの状態で出せばよいか」を逆算して分別できる。埋め立てや焼却ではなく原料に戻すという目的がはっきりするので、作業員にも分別の意味が伝わりやすい。
物流会社が「量を合わせる」役を担った意味
見落とされがちなのが輸送である。再資源化の工場は、毎日いくらでも受け取れるわけではない。受け入れ量には上限があり、解体の進み具合とずれると、現場に廃材がたまる。置き場の狭い都心では深刻な問題になる。
約560トンを一度に動かすのではなく、メーカーの受け入れ計画に合わせて運ぶ。この調整を日本通運が担ったことで、解体の工程と工場の受け入れ枠がかみ合った。建設会社、メーカー、運送会社が役割を分けた点こそ、今回の核心だと考える。
560トンは大きな数字だが、広げるには壁が残る
560トンは、一つの解体工事としては相当な量である。ただし、全国の建設副産物の総量から見れば一部にすぎない。大切なのは量そのものより、他の現場でも再現できるかどうかだ。
古い建材にはアスベスト(=石綿)を含むものがあり、事前調査で見分ける必要がある。含有の有無で処理の道が分かれるため、調査と分別の精度が仕組み全体の信頼を左右する。この確認手順を標準化できれば、他の建材にも同じ型を使えるようになるだろう。
ビジネスへの影響
解体を請ける会社は「出口の確保」を提案に入れる
解体工事の見積もりでは、これまで処分費が中心だった。今後は「どの建材を、どこへ、どの状態で出すか」まで示せる会社が評価されやすくなる。メーカーの回収ルートが使える建材を事前に洗い出し、工程表に分別と搬出の日程を組み込んでおくとよい。
分別の手間は増えるが、処分費の削減や、再資源化の実績という付加価値で取り戻せる可能性がある。
発注者は再資源化の実績を説明材料にできる
ビルの所有者や開発事業者にとって、解体は環境面の説明責任を問われる場面である。何トンをどの方法で資源に戻したかを数字で示せれば、投資家や入居企業への説明に使える。
発注の段階で「対象建材の再資源化計画の提出」を条件に加えるだけでも、施工会社の取り組みは変わる。
小さく始めるなら、対象建材を一つに絞る
すべての建材を一度に分別しようとすると、現場が混乱する。まず天井材など、量が多くメーカーの回収制度がある建材を一つ選ぶのが現実的だ。
次に、取り外しの手順書、保管場所、搬出の頻度を決める。最初の現場で記録を残し、次の現場で改善する。この繰り返しが、制度を使いこなす近道になる。
