ニュースの概要
京都市は10月16日、北区で長年放置されていた違法な盛り土やコンクリートブロックについて、盛土規制法に基づく行政代執行を完了したと発表した。現場では、土地所有者らが約40年前から許可を得ずに建物を建て、盛り土などの造成も無許可だったとされ、近隣住宅への危害が懸念されていた。市は2025年1月以降に建築物の撤去を進め、盛り土などにも計3回の措置命令を出したが、是正されなかったため、市が自ら工事に踏み切った。かかった費用は約3700万円で、市は所有者らに請求する方針である。代執行とは、命令に従わない人に代わって行政が工事を行い、費用を後から請求する制度である。
引用元: 京都市、違法な盛り土への行政代執行を完了 費用約3700万円を所有者らに請求へ(Kansai TV / FNN Prime Online)
分析・見解
40年前の違反に、新しい法律が決着をつけた
今回の現場では、無許可の建築が約40年前に始まったとされる。当時は規制が今より緩く、見つかっても是正までたどり着かない例は少なくなかった。流れが変わったのは2021年の熱海市の土石流である。不適切な盛り土が崩れ、多くの命が失われた。これを受けて2023年5月に盛土規制法が施行され、場所や用途を問わず、一定規模を超える盛り土が許可の対象になった。以前は法律ごとに規制の抜け穴があり、同じ盛り土でも扱いが分かれていた。
今回の代執行は、その新しい仕組みで古い違反に決着をつけた例と読める。過去に造られた盛り土でも、危険があれば是正を求められる。「昔からあるものだから仕方がない」という理屈は、通りにくくなった。
命令を3回重ねた手順が、代執行の正当性を支える
行政代執行は、行政が本人に代わって工事をする強い手段である。そのため、行政代執行法は、他の方法で義務を果たさせることが難しく、放置すると公益に著しく反する場合に限って認めている。市が措置命令を3回出したのは、手順を踏んだことを記録に残す意味もある。後から所有者側に争われても、十分に機会を与えたと示せるからである。
建物の撤去を2025年1月から先に進め、盛り土は後に回した順序も目を引く。建物が残っているうちは、土砂やブロックに手を入れにくいという実務上の事情があったと考えられる。一つの現場を片付けるだけでも、段階を踏んで長い時間がかかることがわかる。
3700万円は請求額であり、回収額とは限らない
行政代執行法では、かかった費用は義務者から徴収する。払われなければ、国税滞納処分の例によって財産の差し押さえなどに進める。ただし、相手に資力がなければ回収は難しい。空き家の代執行でも、費用の回収が課題になる例は各地で指摘されている。
ここに今回の事例の隠れた意味がある。代執行は、工事が終わった時点では終わらない。請求書を出し、回収まで続けて初めて、放置すれば高くつくという信号が社会に届く。逆に回収できなければ、税金で違反の後始末をしたという印象だけが残る。
同じ悩みを抱える自治体に、先例として広がる可能性
全国には、旧法の時代から残る盛り土が数多くある。多くの自治体は、人手も予算も限られ、立て替え払いが必要な代執行に踏み切りにくい。京都市が命令から工事まで一連の流れを示したことで、他の自治体が手順を参考にする場面は増えるだろう。ただし、先例があっても、費用の立て替えと回収の不確かさという壁は残る。今後は、ドローンや航空写真で盛り土の変化を見つけ、危険度の高い場所から順に対処する動きが広がると見込まれる。
ビジネスへの影響
土地を持つ人が、まず確かめておきたいこと
最大の教訓は、前の持ち主が造ったものでも、現在の所有者が責任を問われうる点である。今回も、費用は土地の所有者らに請求される。土地を買う、相続する、貸すといった場面では、盛り土の有無と許可の記録を必ず確認したい。造成の履歴は、登記簿だけではわからない。自治体の窓口で許可の履歴を尋ね、古い航空写真と見比べると手がかりになる。資料が残っていない土地は、専門家による現地調査も選択肢になる。
不動産や建設の現場で、審査項目が一つ増える
不動産会社や金融機関は、対象地の盛り土の安全性を、審査の項目に加える時期に来ている。違反が見つかれば撤去費用が数千万円規模になりうることを、今回の約3700万円が具体的に示した。売買契約では、造成の経緯の説明や、将来の是正費用の負担を書き込んでおくと、後の争いを減らせる。建設会社は、残土の搬出先が許可を得ているかを確かめたい。無許可の現場とつながると、取引先として問題に巻き込まれる恐れがある。
命令が届く前に、自治体へ相談するほうが安い
近隣に気になる盛り土があるなら、早めに自治体へ伝えることが有効である。今回の現場でも、危害の懸念は長く指摘されていた。通報は、行政が動く最初のきっかけになる。すでに許可のない盛り土を抱えている所有者は、命令を受ける前に自分から相談し、段階的に直す計画を示すほうがよい。代執行になれば、費用は全額負担となり、時間も信用も失うからである。社内でも、保有地の一覧と造成の経緯を一度棚卸しし、確認が取れない土地に印を付けておくと、優先順位をつけやすい。
