ニュースの概要
測量大手のパスコと愛知県豊田市が、航空写真をAIで解析して不法投棄や廃棄物の不適正処理を見つける実証実験を行うと発表した。これまで職員が過去と現在の写真を見比べ、怪しい場所を選んでいた作業を、AIの判定結果と並べて比べる。見つけられる精度と、作業時間の減り具合を確かめる狙いだ。対象は廃棄物の不法投棄現場が中心だが、建設発生土や建設汚泥が不適切に積まれた場所の把握にも広げられる可能性がある。広い市域を少ない人数で見守る自治体にとって、監視の進め方を変える試みといえる。
引用元: 航空写真をAI解析、豊田市とパスコが不法投棄・不適正処理の早期発見を実証(デジコン)
分析・見解
人の目による写真の見比べには限界がある
不法投棄の監視は、地道な作業の積み重ねである。職員は現地を巡回し、航空写真を年ごとに並べて、土の色や盛り上がりの変化を探す。豊田市は面積が約918平方キロメートルあり、愛知県内で最も広い市だ。山間部も多く、すべてを人の目で追うのは現実的ではない。
問題は、見る人によって判断がぶれることだ。ベテラン職員は小さな変化にも気づくが、異動すれば経験は失われる。今回の実証は、この属人的な作業をAIで下支えできるかを試す点に意味がある。
AIが見つけるのは違反ではなく変化の候補である
誤解されやすいが、AIは写真を見て違法かどうかを決めるわけではない。やっていることは、前の年にはなかった盛り土、荒れた地表、積まれた資材などの変化を拾い上げ、人が確認すべき場所に順位を付けることだ。
ここで大事なのは見逃しの少なさだ。誤検出が多少あっても、現地確認の対象を絞れれば効果は大きい。逆に、見逃しが多ければ、安心感だけが残って危険になる。実証で比べるべきは、AIの正解率よりも、人が見落とした場所をどれだけ補えたかである。
建設発生土や汚泥まで見えるかが技術の分かれ目
一般ごみの山は、写真でも比較的わかりやすい。一方、建設発生土や建設汚泥は、色や形が普通の造成地や農地と似ており、判別が難しい。2021年の静岡県熱海市の土石流では、不適切な盛り土が被害を大きくしたとされ、全国で盛り土の点検が進んだ。あの事例以降、自治体は盛り土の位置や規模を把握する必要に迫られている。
衛星や航空写真は、一枚ごとの解像度が高くなり、撮影頻度も上がってきた。高さの情報を持つ測量データと組み合わせれば、土が積み上がった量の変化も追える。写真だけで判断するか、高さ情報も使うかで、検出できる対象は大きく変わるだろう。
本当の課題は検出後の動きの速さにある
見つけるだけでは問題は解決しない。発見後に、現地確認、土地所有者の特定、事業者への指導、必要なら行政処分と、手順が続く。この後ろの工程が詰まれば、早期発見の価値は薄れる。
今後は、AIの判定結果を職員の現場アプリや台帳と結び、確認の記録を残す仕組みが求められる。検出から指導までの日数を指標にすれば、成果が見える形になる。技術の進歩より、運用の設計が成果を左右する分野である。
ビジネスへの影響
建設・解体・運搬業者は記録の整備が防御になる
監視の目が細かくなれば、不適正処理の疑いをかけられる機会も増える。建設発生土の搬出先、受け入れ量、運搬の記録が整っている事業者は、確認が入っても短時間で説明できる。紙の伝票や写真を後から探す運用は、これから負担になる。搬出日、数量、搬入先の写真を、案件ごとにそろえて残す体制を早めに作りたい。
自治体や測量会社には共通の評価物差しが必要になる
実証が成功しても、他の自治体がそのまま使えるとは限らない。地形、土質、土地の使われ方が違うためだ。導入を考える自治体は、見逃し率、確認に要した時間、職員一人あたりの対応件数を、実証前後で同じ方法で測ると判断しやすい。測量会社にとっては、撮影から解析、現地確認の支援までを一括で売る形が、継続的な収益になり得る。
小さく試して自社の現場に当てはめる
土地を多く持つ企業や、資材置き場を運営する会社も、自社用地の定点比較に応用できる。年に一度の航空写真と、現地の巡回記録を並べるだけでも、無断投棄の早期発見につながる。まずは一か所で試し、手間と効果を確かめてから広げるのが現実的だ。
